人はいなかったけど、
一つの小さな段ボールが置かれていた。
一歩一歩近づくと
『拾ってください』というメモと
寂しそうな顔をしている子犬がいた。
「どうしたの?」
答えるはずがないけど
今は、子犬でもいいから誰かと喋りたかった。
あたしはゆっくり子犬を抱え
公園の遊具に腰掛けた。
「キミも一人か。…一緒だね」
ポツリと呟くと同時に、また涙が溢れてきた。
子犬はあたしの涙をペロペロ舐めた。
「名前、呼んでくれなかったよ……」
どんどん流れる大粒の涙。
どんどん崩れていく心。
「『お嬢様』って言われちゃった…」
涙が出る分、子犬が忙しそうに
あたしの涙をペロペロ舐めていた。
まるで、『泣かないで』と言っているように。


