取り残されたあたしと仁は
お互いかける言葉が見つからず、重たい沈黙が襲ってきた。


こういう時、なんて言ったらいいんだろう。

人生経験が豊富じゃないあたしには
分かるはずがなかった。

こんなこと、初めてだったから。


あたし、まだ16歳なのに。

16歳なら、結婚出来る歳だけど
まだやりたいことがいっぱいある。

それに……。



「ルア、朝食食べろよ」

「へっ!?」

「もうすぐ学校だろ」


仁の言葉にあわてて席についた。


仁がうまくこの空気を変えてくれたお陰で、
重たい沈黙が消えた。



仁…。

仁は、どう思ってるんだろう。
……っていっても、所詮執事だから
何にも考えてないんだろうけど。


自分の心の中で、勝手に思ってるだけなのに、
なぜか悲しくなった。


このまま、恋も知らないで
勝手にお見合いをさせられるのかな。


お父さんが決めた人で
お父さんが決めた場所で
お父さんが決めた結婚を、させられるのかな…。


お父さんには悪いけど…嫌だな。



「…ごちそうさま」


食事は喉を通らず、
重たい足取りで学校へ向かった。