「お嬢様、そろそろお時間です」

「んー…」


耳元で声がして、重たい瞼を少しずつ開けた。

啓人かと思ったけど、仁だった。


あ、そっか。
啓人は燐の家に行ったんだった。


「朝食の準備が出来ましたよ」

「あ…朝か」

「…お嬢様は、朝に弱いんですか?」


あたしをみてクスクスと笑う仁。


「どうして?」

「だって……ブッ!」


執事であろう仁が、吹き出すくらいの面白さって
この状況で何があるの?

全てが“?”で埋め尽くされたあたしを見て、
仁はさらに肩を震わせて笑い出した。



「髪、凄いことになってますよ」


フワッと仁があたしに覆いかぶさるように髪を触ってきた。

そして、手櫛で髪を少し慣らした。


「よし。これで笑うまではなくなりましたよ」

「あ、あたしの髪って、そんなに笑うくらい凄かったの?」

「そりゃもう」


ニコッと笑みを見せる仁。

あたし、今ほんの少しだけ仁を意識してしまったかもしれない…。