啓人の引っ越しの準備をしていたら
あっという間に、日曜日になった。

屋敷の皆の見送りに、
啓人は笑みを浮かべて
燐のいる屋敷へ向かった。



一段落したし、
明日の準備でもしておこうかな。

立ち上がって、机の横にあった鞄の中身を
明日使う教科書に入れ替えた。



──コンコン。

外で誰かがノックする音が聞こえた。


「はーい」

だらしなく返事をして、入ってくる相手を待った。


「失礼します」


いつもと変わらない言葉。

でも、口にした人物は…。


「仁っ」

啓人と一緒に引き取った(?)仁だった。


啓人と仁を引き取った後、
あたしは啓人に付き添って貰っていて。

仁は啓人ほど、あたしの側にはいなかった。



「この度、お嬢様の付き添いに命じられました」

「え?誰が決めたの?」

「旦那様です」

「お父さんが……」


あたしは軽く眉間に皺を寄せて
お父さんが何を考えているのかを考えた。

…けど、答えなんて見つかるはずもなく。



「ということですので、
これからよろしくお願いします」


なんやかんやで
仁があたしの執事にすることになった。