「お嬢様、それはどういう…」

「うちをやめて、燐の家の執事になって欲しいんだけど…」

「え?」

「燐が、執事をもう少し欲しいって。ね、燐」


啓人は驚く表情を隠せないまま
燐の方に視線を移した。


「え、ええ」

「だから、貴方に行ってほしいんだけど…」


啓人に投げかけると、
少し困った表情をして考え込んでしまった。


「…どう?」


少しの沈黙が押し寄せてきた。


「…分かりました」


意を決したように言った啓人。

ホッとした表情を見せた燐。



「啓人さんが新しく入ったことは、私から家の者に言っておきますね」

「よろしくお願いします」

「じゃあ、来週から行ってもらうことにしましょうか」

「はい」

「これで決まりってことで!」


燐が頷いたことを確認して
車に乗り込むと同時に
こっそりピースサインをした。

燐も微笑みながら、返してくれた。


これで燐のことは大丈夫だろう。

あとは2人の問題だから。

暖かい目で見守っていこうかな。


幸せそうな燐の顔を想像して
一人でこっそり笑った。