恵からの突然の電話から2時間が経った頃、実琴の家のチャイムがなる。


―――ピンポーン―――


二階に居た実琴は、階段を駆け降り、素早く玄関の戸を開く。

「おじゃましま~す。」

恵が照れ臭そうに言う。

「どうぞどうぞ。急だったんで、部屋散らかってるんだけど。」

そんな事を言いながら、階段を上る二人。

家の中は、静寂に包まれ、二人の足音だけが室内に響く。

「あれっ?誰も居ないのか?麻琴は?」

「親は仕事、麻琴は、最近いい下僕が出来たみたいで、買い物に行ってるみたい。」

「下僕…?そうか…。」
「確かに、俺としては、荷物持ちをさせられなくなったからいいけど…。何となく、申し訳無くて…。」

すると、恵はそう言う実琴の頭をグリグリっと撫でる。

「いや~実琴はそういう所がイイんだよ!うん!」

一人で納得しながら、恵は微笑む。

小悪魔的な容姿を持つ恵が微笑むだけで、実琴の鼓動は早くなる。

付き合い始めて、3年は経つというのに、実琴は未だそういった事に慣れない。

実琴の緊張が恵に伝わり、部屋の空気を妙な色へと変える。

変わりかけた空気を戻すように、恵がわざとらしく、声をあげる。
「そうだよ!ゲームしに来たんだよ!」

そう言いながら、テレビの下のゲーム機を取り出そうとする。

「あっ!そんなっ!俺がやりますっ!って…あぁ~…。」

(終わった…)