「…ごめんね…。」

恵は、遠くからそう言われた気がして目を覚した。

ゆっくり目をあけると、そこには優しく頭を撫でる実琴がいた。

「うっ…、う~ん。」

伸びをしようとするが、下半身に鈍い痛みが広がる。

「だ、大丈夫?!」

眉間に皺(シワ)をよせる恵に、心配そうに声を掛ける。

ようやく、状況を把握し、顔を赤らめながら答える。

「う…ん。多分、大丈夫…。」

「…恵さん…ごめんね。」

「えっ?」

「俺、こんなつもりじゃなかったんだ。恵さんが、まだそういう関係になりたくないっていうのは分かってたんだ。だから、恵さんの気持ちが整理できるまで、どんなに時間が掛かっても待とうって。それこそが、恵さんへの愛だって…思ってたのに…。」

実琴は、今にも泣き出しそうな顔で話し始めた。

「…うん…。確かに驚いたし、最初は恐かった…。でも、オレは実琴に嫌われるんじゃないかって、恐かったんだ。表面上は女だけど、そういう風になったら、やっぱりムリとか、言われるんじゃないかって…恐かったんだ。」

「…じゃあ、許してくれるの…?」

「許すも、何も、怒って無いよ。」

実琴の頬に手を伸ばし、優しく微笑む。

「…ありがとう。」

ゆっくりキスを交わし、見つめ合う。

外はもう夜。

昼間響いていた子供達の声に代わって、虫の声が響く。

二人抱き合いながら、耳を傾けていた。