「俺が何か悪い事言ったなら、謝る」


帰りの電車に乗ってからどちらも口を開かなかった。

しばらく居心地の悪い無言のまま電車に揺られていたら、純夜が震える声でそう言った。

違う、純夜のせいじゃない

「…俺が、変な質問したからだ」

両手で顔を覆って大きく息を吐いた純夜


違う、違うのに。

私が、変に反応して
答えられなかっただけなのに。


降りる駅の名前を知らせるアナウンスが響く。


「ごめん、」

そう言って立ち上がった純夜の腕を咄嗟に掴んだ。


そのまま電車を降りてホームの端に純夜を思い切り放り投げた。


「純夜の、バカ!」


夕日に照らされた純夜の大きな瞳から涙が伝った。


泣きたいのは、こっちだ。


眉を精一杯寄せて泣かないようにする。


「今日の朝の質問、答えればいいんでしょ!」


誰も答えろなんて言ってない事はわかってる。


だけど、気づいたら言葉が出てたんだ。


「私が、今好きなのは、」


なんで、こんな恥ずかしい事、
こんなとこで言わなきゃなんないの。


目を瞑ったら、じわじわと涙が出てきた。


言うまで、泣いちゃダメ。

「わたしが、すきなのは」


言わなきゃ


今言わなきゃ

目をぎゅ、と思い切り瞑って

「純夜、なんだから…!」


思い切り言ってやった。


人生初の告白を大声でしてしまった。