学校についたら、丁度自分の席の前に座っていた友達の沙耶ちゃんが軽く手を挙げて挨拶した。


「あ、おはよう。悩める乙女さんっ」

「なに、その名前」

「今の優菜に一番ぴったりなあだ名。」


片目を瞑って笑った沙耶ちゃんに眉を寄せて自分の席に座る。


「ね、何があったの?」

キラキラした瞳で問いかけてくる沙耶ちゃんに近いよ、と近づけられた顔を手で押し返してため息をついた。

沙耶ちゃんから香る甘い香りは先日彼氏から貰ったものだそうで、毎日つけてて飽きないのか、心配になる。

くるくるに巻かれた金色の髪を長い指に絡めながらも目はこちらに向いたまま。

そんな沙耶ちゃんにもう一度ため息をついてから、今日の出来事
主に自分の気持ちについて
報告した。


みるみるキラキラしてくる沙耶ちゃんから距離を取りたい衝動に駆られつつ全て話し終えれば、沙耶ちゃんの腕が首をしめた。

「おめでとうっ!かわいいよ、優菜っ!」

「く、び…っ!」


ぎゅ、と抱きしめられて
恥ずかしかったから無理矢理腕を引き剥がした。

「もう、優菜って本当に照れ屋さんよね。」

「照れてなんかないっ!」

にっこりとキレイに笑う沙耶ちゃんにべぇっと舌を出して顔を机に伏せた。