「いってきます。」

「優菜、お弁当は?」

「持った」

母親との会話を軽く済ませて家を出る。

蒼井優菜

高校一年


朝から快晴とも呼べる程の青空が広がる中、
私は駅へと爪先を向ける。
今年から高校一年生。

友達と一緒に入った高校

始まって一週間たった高校生活


未だに慣れない早起きから出る欠伸を噛み殺して駅の改札をくぐった。



今日は珍しく混んだ車内に眉を寄せた。


ぎゅうぎゅうと人が密集する中、扉にもたれてうとうとする。


うとうと、うとうと。

もうすぐで寝付けそうだったのに、


「あのっ」

真上からの大きな声にびっくりして目を開けた。


誰かの呼び掛けに、若干の居心地の悪さを感じつつ、満員電車だし、他の人への呼び掛けだろうとあまり気にしなかった。

もう一度、目を閉じる。
今度こそ眠れるように。

ぎゅ、と瞑った目

でも、

「すみませんってば」


まだ聞こえる声に少しおかしく思って声のする方を向いてみた。

ついでに声の大きさも下げて貰おう


別に、声の大きさが気になっただけなんだから。


自分に言い聞かせるように呟いてから、顔にかかった髪を片手ですくい上げて耳元にかけながら見上げた。