しかし寒い。私は制服の上に着ていた灰色のカーディガンの袖を伸ばして、手先を隠す。
そういえば季節はもう冬。冬なんて、カップルが絆を深めるイベントがたくさんあるのに。
せめて冬終わってから別れたかったな。あーあ。なんて1人心の中で呟きながら、
隣に座ったままの鮎を横目で見る。こいつも私と同じようなことを思っているだろう。ていうかあたしの元カレが他の女と腕組んで歩いてたとか、なんでそういうこともっと早く言わないの。まぁ私も、鮎の元カノが尻軽で結構有名だってことは知ってたけど。
だって、言えなかった。
鮎の悲しい顔なんて、見たくもない。
いやいやいや、そういう意味じゃなくてね?なんつーか、見飽きたの。そう。その言葉がふさわしい。見飽きた。そうだ。そういうことだ。小さい頃、私が鮎の大切なおもちゃを壊してしまった時とか、大事にとっておいたアイスをあたしが勝手に食べたことを知った時とか。鮎の悲しい顔はたくさん見てきた。あ、あと、中学生の頃、「俺の彼女にでもなれば」とか生意気に言ってきてムカついたから断った時、一瞬だけど、鮎の顔が……
「って、なんで鮎のことばっかなんだよ!」

