いや、実際貫かれたことはないが、なんと表したらいいか分からない衝撃に、思わず私は硬直してしまった。顔が熱っぽくなっていくのが自分でもわかる。それを恥ずかしいと思えば思う程その赤みは増していくと思うと、ハンドルから手を離して自分の顔を隠したくなった。


彼が、私の自転車についているカゴの角をぎゅっと持ったまま、離そうとしないのだ。
一瞬、私は焦った。彼はずっと黙ったままだ。黙って前を向いている。こちらを見向きもしない。声をかけようかと思った。だが今かけたら、きっと変な雰囲気になってしまう。自分の意識のしすぎなのかもしれない。いや、だって。好きな人が、自分と繋がってる。手と手じゃないけど、物を通して。きっと彼はそういうつもりじゃないだろう。期待しちゃ駄目だと分かっていても期待してしまう自分の心を今日だけは許すことにしよう。だって、そんな時間が、なんだか堪らなく嬉しくて。



ああ、でも、どうかお願いします。今だけはこちらを向かないで!
(きっと彼は私のことをゆでダコと呼びそうだから)



07 end



※これ(短編07)は実は9割実話だったりするんです。なんて恥ずかしい^p^