二人のキョリ



「今日も疲れたー」


仕事を終えて

家につくなり

あたしは叫んだ。













「おかえり、希久乃。
今日もお疲れさま。お風呂わいてるよ。」












リビングから出てきた彼は

優しく微笑む。



「うわっただいま
また来てたんだね秋…。」



あたしはいつものように素っ気なくかえす




「うん。希久乃に会いたくなったから

そいえばご飯は食べた?」

そうやって昔と変わらない笑顔を向けてくれるんだ。












でも、

あたしは秋に会いたくもないし。

出来ればこの顔なんてみたくもない。









「...もう何しに来たわけ?
ほらっ顔見せてあげたんだから帰れば?」


そう言って

荷物を置くために自分の部屋に行く


「なんでそんな冷たいかな。
希久乃に元気もらうために来たのに」


そんな言葉を耳にしながら

彼の横を通り過ぎると

彼の匂いが鼻を掠めた。



あたしの落ち着く匂い。




匂いは記憶に残るとはよく言ったものだ

本当にその通りで秋の家の服は

いつもいい匂い

これは秋のお母さんが選ぶ柔軟剤の

チョイスが良いせいだ!

そしてあの秋が着てるんだから

もうその匂いを嗅いだだけで

落ち着いてしまうという事態

もうこの習性どうにかして