「ねぇ、この前言ってたさ、中3の時付き合ってた人がいたとか、何とかって話の続きしてよ」

「あー、この前の」

「そう!」


ついに言った。

聞きたくない、けど…知っておきたい。


啓太の過去。

啓太の大好きだった人の存在を。



「だからあれは、俺らが中三の時、啓太が…」


ごく。

その時、


「あっ!鮫島ぁ!貴様っ、昨日も補習サボりおって!今日という今日は許さん!!」

「うげっ!上田!」


英語担当の上田先生が、鮫島を見つけて鬼の形相でこっちに向かってきた。

鮫島は、顔色を変えて、あたしの肩を乱暴に叩いた。


「いったっ!」

「悪いっ、また後でなっ!」

「えっ、ちょっ!ちょっとぉーっ!」


鮫島は一目散に走り去ってしまった。


それからすぐに、「ぎゃーっ」って声が聞こえたから、階段のあたりで上田先生に捕まえられたらしい。



「……はぁ~、また聞けなかった~!」


何でいつもこう、邪魔が入るんだろ?

でも、諦めないよ!


とにかく、また鮫島を訪ねよう。

ちゃんと聞こう。



さて。

あたしは手元のDVDを、啓太に届けなきゃ。


あたしは、階段を降り、昇降口に向かった。



学校を出る時、帰りにおみやげでも買っていくかと思った。