「よしっ、ここらへんでいいね!」


あたし達はしばらく歩いて、土手の所まできた。

ここはあんまり車も通らないし、花火するには最適の場所だ。



急がす指で、べりっと袋をやぶき、あたし達は花火を手に取った。



啓太はちゃっかり両手に花。

こんな時期に花火できるなんて思いもしなかった。



何だか、新鮮だな。

今年は、夏も花火しなかったから、よけい。


啓太は笑って、「じゃ、火つけるよ」と言い、チャッカマンをカチカチ鳴らした。


「うん!」



わくわく。

しかし…。


「あれ…?」


カチカチ、カチカチ。

火がつかない…。


え~?!


「ちょっと、花火しけってるんじゃない?」

「マジか~…ちょ、美園、そっち風よけして」

「あ、うん!」


あたしはしゃがんだまま、体を右にずらし、思わず花火の先の方に顔を近づけた。


その時、バチバチと音がして、花火に火がついた。


あたしは慌てて顔を体を離した。