「美園は、たこ焼き派?やきそば派?それとも、お好み焼き派?」
「……たこ焼き」
土曜日、秋のお祭り。
歩行者天国、出店やフリーマーケットが立ち並んでいる。
あ~あ、まだ気持ちの整理がついてないままなんだけどな。
あたしは今日も啓太の隣で歩いてる。
しかしまぁ、この啓太の嬉しそうなこと!
「ていうか、すごい人!ねぇ、啓ちゃん、はぐれないでね…って、あれ?」
啓太がいない?!
まったく、言ってるそばから、あのバカ~!
あたしは慌てて、辺りを見回した。
すると、「美園」と名前を呼ばれた。
啓太はわたがしを持って、嬉しそうに戻ってきた。
ふわふわ、ふわふわ、甘いお菓子。
「…また、共食い…?」
「ん?何か言った?」
「いや、何でもない…」
くう、やっぱり可愛い…。
はぁ、脱力。
今日の啓太は、黒いジャケットの下にグレーのパーカーを着てるから、今度はぐれそうになったらフードひっぱったる!
「美園、じゃあたこ焼き買ってくるから、ここで待っててねん」
「うん。いってらっさい」
「あ、動かないでよ?迷子になるから」
「ハイハイ…」
誰がなるかっ!
あんたじゃないんだから…。