“カノジョ”。


啓太は何て答えるの?

お母さんの前じゃないから、彼女っていう必要はない。

じゃあ何?

あたし達の関係って何?


友達?同級生?知人?


ああ、何であたしこんなに動揺してるんだろう…?


あれ?

あれ?


やだ、聞きたくない…!


「あ、あたし!よ、用事あるから帰るね…!」

「え、帰っちゃうの?」

「うん…バイバイ!」

「あ、美園…!」


あたしはその場を走り去った。

振り返らずに角まで走った。


振り返らなくても分かるよ。

二人は、ポカンとあたしの後姿を見ていたはずだ。『何事?』って。



あーっ最悪!



あたしはエレベーターに乗り込みながら、さっきの鮫島の言った言葉を思い出した。


“あー…中三の時に…”

“吹っ切れたんだ?”



啓太、付き合ってた人いたんだ…。

って、そのくらい、当たり前だよね。あたしだって、ついこの前まで直樹先輩の事好きだったし。



そうだよ、別に全然、そんなの…気にしない…。



動揺してる、あたし。

何だろう?苦しい。



好きだったの?

どうやって付き合うことになって、どんな幸せな時間過ごして、どうやって裏切られて、どうやって…。


啓太はどんな気持ちで、あたしに話したんだろう?


知りたい。知りたい。知りたい…―。