「悪いけど、あたし、あんたの気持ちに応えられないから」


あたしの中で“悪女風”、マイブーム。

ああ、あたし、罪な女……。



すると、またきょとんとする啓太。

今回は、わざとじゃないみたい。



「何?それ。別に本気になってないよ?」


………あら?


啓太は「あれ〜」とニヤニヤ笑いながら、ポケットに手を突っ込み、あたしの目の高さに合わせて、腰をおった。


「もしかして美園……本気になっちゃったの?惚れた?」



なっ!!なっなっなー?!



「なっ!なるわけないじゃん!バカじゃないのっ?」



いつになく動揺するあたしを、啓太はまた面白がって見ている。


そして、あぐらをかいてソファに座り、テーブルの上に置いてあった苺ミルク味の棒つきキャンディーを口に入れ、テレビをつけた。


そして、コロコロとチャンネルを変えていく。

はっはっはーと、調子に乗って、わざとらしく笑う啓太。


「言ったね?絶対ね?美園」


うっ…。

何か今日は啓太の方が優勢!?


「あ~録音しておけばよかった~!」

「あのねぇ…!!」


はっ!

…ふう、落ち着いてあたし。いつもの冷静な自分を思い出して!



「安心して。絶っ対、惚れない!そういう啓ちゃんの方こそ、気をつけた方がいいよ?」


何とかして、(ちょっと悪女っぽく)そう言い放ったあたしだったけど…。


「はっ、喰われない様に気をつけます、大佐!」


喰っ…!?

なっなっな、何なの、その余裕っぷり〜〜!



でも、ゆるく敬礼してみせた啓太にまたもや!

こう、胸がうずうずして…。


うっかり女心くすぐられてしまうあたし。そう、“うっかり”。


はぁ、進歩なし。