――昨夜


「お母さんのバカ!あたしもう家に帰らないから!」

『バカなこと言わないで帰ってきなさい!美園』

「もうぐれてやる!これから非行に走る!」

『…あのねぇ、非行に走る子はわざわざ宣言なんかしませんっ!』

「とにかく帰らないから。さようなら!」

『あっちょっと、美園…』



ツーツーツー。

そうだ、あたし。

進路がどうの、将来がどうのって話でお母さんと討論になって、家飛び出して…。



「非行って言ったら、まずはお酒よね。自販機、自販機…」



(※未成年の飲酒は法律で禁止されています。)



自販機を発見したあたしは、右を見て左を見て、あたりに人がいないか確認してから、にんまりと笑って、缶チューハイのボタンを押したんだ。


CMで好きな女性アーティストが宣伝してたりしてはいるものの、お酒なんてあたしにとっては、未知の飲み物。



少しの罪悪感と、一気に大人になったような快感、そして、自分は今世の中に反抗しているんだ、というスリル。



バカなことだって事は分かってる。でも、いいんだ。

『若気の至り』って言葉があるじゃあないか。



あたしはそんな思いで、ぷしゅっといい音を立ててふたを開け、流し込むようにチューハイを飲んだ。


「ぷはーっ、何だ、結構ちょろいじゃん」



そして、調子に乗ったあたしは缶一本飲み干すと、ありえないくらい気持ち悪くなって、ふらっふらになって…。


「ヒック。気持ち悪っ…うえ……」