「啓ちゃん、小さい時に、女の子みたいとか、同級生の男の子とかにからかわれてたのよ。だから、本人も結構気にしてるみたいでね。ジョギング始めてみたり、寝る前に腕立てふせしたりしてたのよ」


「あははっ、そうなんだ」

「あ、啓ちゃんには内緒よ」

「了解ですっ」


くしゃん!


啓太がくしゃみをして、こっちを見た。

噂してるの分かったのかな?


あたしは啓太ママと顔を合わせて、「し~」と言って笑い合った。


「でも嬉しいわ。美園ちゃん、啓ちゃんの事、すごく大切に思ってくれてるの分かるもの。好きでいてくれるんだなって」


「いえ、そんな…」


「まぁ、母親としてはねぇ。ちょっと寂しい気持ちもあるけどね…。でも、自分の大事な息子の事を好きでいてくれる女の子がいるなんて、やっぱり嬉しいもんよ。美園ちゃんもっ、その内親になったら分かるかもね」


啓太ママはあたしの肩をつんと叩いた。

精一杯の笑顔で返したけど…。



何だろう、これ。

ズキズキ……。



大切に思ってる?あたしが?啓太を?

そうかなぁ…?あたしはちょっと考えてしまった。



だってあたしは彼女じゃない。

彼女のフリをしてるだけだよ?


これって、嘘をついてるのと同じになるのかな。

啓太ママの顔を見ていて、何だか罪悪感に襲われた。



でもどうだろう。

もう明日から来なくていいよ、なんて言われたらちょっと寂しいかもな。


でも、“好きか”って言われても…まだ頷く事なんて出来ないと思う。



じゃあ、あたしって、啓太の何?

何で一緒にいるんだろう?