「啓太!次はゾウね!ゾウ行こう!」

「やだ!あっち。レッサーパンダがいい」



“お前みたいなガキ相手にするわけねぇだろ”


先輩にそんな風に言い放たれた次の日、祝日で学校は休み。

あたし達は、例の動物園の招待券で動物園に来ていた。


「あ、モルモットだ!いっぱいいる!何か、ちょこまかと落ち着きがないね」

「ホントだ。何か美園がいっぱいいるみたいだね」

「何をぅ?」


あたしはふっと啓太の口元に目をとめた。

啓太の口元は、あの時殴られた傷で赤く腫れている。

それを見て、あたしは昨日の事を鮮明に思い出す。



昨日は眠れなかった。

先輩の冷たい目が焼きついて、離れなくて。



哀しいというより、くやしかった。

だけど、もう忘れる決心はついたんだ。


でも今日はちょっとから元気。

啓太に心配かけたくないから。



啓太。


守ってくれた。かばってくれた。

殴られてまで、あたしの味方してくれた。



啓太の男らしい一面を見た気がして、何だか不思議な気持ち。



でも、嬉しかったんだ、あたし。

本当に嬉しかったんだよ。