―…

ピーンポーン。


啓太のマンションって、案外学校から近いんだな。

あたしの家は学校の前のバス停から市営バスに乗って、5つ目なんだけど、啓太のマンションは1つ乗るだけ。

だから啓太は毎日チャリで通ってるみたいだ。


10秒たった。


「…何で出ない」



あたしは顔をしかめてドアを叩いた。


あ、ていうかアレがあるじゃない。

啓太から手渡された、空色の鍵が。



何だか照れくさくて戸惑いながらも、あたしは鍵をポケットから取り出し、鍵穴に差し込んだ。


別に悪い事をしてるわけじゃないのに、左右後ろ、辺りに人がいないかキョロキョロと確認した。



右?あ、左に回すと開くのね?

勝手に人の家の玄関開けるなんて、何だか不思議な感じ。



「お邪魔します…。啓太〜?」

返事がない。


「啓太〜?啓ちゃ〜ん?」

いないのかな…。って、アイツから呼び出したくせに?


ひんやりするフローリング。

電話の留守電のランプがチカチカ光っている。



「啓、啓、啓〜。いないの〜?」


あたしは部屋中を探し回って、まるで犬みたいに啓太の名前を呼んだ。

何だ、やっぱりいないじゃんと思った時……