あたしは答えずに、寝そべったまま歌を続ける。


「…茜色 染まったら また君を思い出すから―…僕は必死で目をつぶるんだ―…」



静かにサビを歌い終えても、あたしは寝そべったまま動かなかった。

啓ちゃんは、フェンスに手をかけて、目を細めて遠くを見た。



柔らかい栗色の髪に、太陽の光が反射して、オレンジ色になった。

柔らかい風が髪をなびかせた。



「…ひとりになるのが怖いから 僕は目をつぶるんだ―…」




あたしがそう歌い終えると、啓ちゃんが言う。




「俺、結構寂しがり屋なのね」


あたしは静かに耳を傾ける。



「だから、いつも誰か傍にいてくれないと、潰されちゃうんだ。うさぎみたいに。愛美の時は…あの日、待ってたのに愛美が来てくれなかった事が、今でもトラウマみたいになっててさ。後で愛美の話とか全然聞かずに、一方的に“裏切られた”って思い込むしかなかった」




啓ちゃんは、そう言って振り返り、あたしのいる方へ向きを変えた。

そして、笑い出した。