冬の空の下で、ふたりぼっちみたい。

ざわざわと生徒達の声が聞こえるのに、それも何か、海の波のざわめきみたいな。



今、ふたり、小さい。

ちっぽけすぎて、消えてしまいそう。



あたしが小さく俯いていると、啓ちゃんが小さく呟いた。



「昨日のこと……」



もう笑えない。ごめん。

口がへの字に曲がる。





「俺…よく分んなくて。どうしたらいいのか。でも、でも……俺、美園にだけは」




啓太も俯く。

そして、顔を両手で覆う。







「美園にだけは見られたくなかったんだ……」







啓ちゃん―……。




目から、ありえないくらい涙が溢れてきた。




声を殺して、泣いた。

啓ちゃんの声は震えていた。



ふたりとも小さく俯いたまま、黙っていた。

ポケットのうさぎの鈴がシャリンっと鳴った。




この、見たこともないキーホルダーのうさぎが泣いている。

覚えてなかった?あたしの鞄。



これはあたしのじゃない。

きっとこれは………。





『好き』とも『帰る』とも、言えずに、あたし達は、ただこの場所に取り残されていた。





冬の空の下で、ふたりぼっち。