―…

「どこだっけ…?確かこっちだったよね」


ほぼ百パーセントの確立で、あそこに置いてきた可能性が高い。


そう、啓太の部屋。



家からそんな遠くない所とはいえ、見知らぬ地形に迷ってしまう。


こんな所に公園あったっけ?

こんなに住宅街に入り組んでたっけ?


通行人に聞くのは、昨日の事もあって抵抗があるし。



軽くパニックを起こすあたし。

そんな時、思い出したのが、ケー番が書かれた紙切れ。



そういえばポケットに入れっぱなしだったはず!


「あった!」


汚い字で書かれた番号に、あたしはためらいながらも電話をした。


『ああ、そこなら近いよ。そこ右に曲がってすぐのとこ』と言われ、電話するんじゃなかったと思った。


―…


ピーンポーン。部屋の前でチャイムを鳴らす。

何でちょっとドキドキしてんだろ、あたし。



ていうか、もう二度と会わないとか思ってたのに、また自ら顔を出しちゃうなんて!

何てばかばかしい…。


学生証受け取ったらすぐに帰ろう。うん、走って帰ろう。



そう思った時、ドアの向こうから声が聞こえた。


電話してる?

そのまま、ガチャっとドアが開いた。