ちらっとキッチンを見ると、啓太はシンクの汚れをゴシゴシとこすっていた。
ふふ、何か、新婚さんみたい。
大掃除で働く旦那さま、嗚呼、素敵…!
こんなに妄想にひたれるまでになってるなんて、あたしも大分吹っ切れた、というか、割り切れてるな。
うん。
いい調子、いい調子。
雑用をまんまと押し付けられてるっていうのに、あたしは嬉しかった。
本当、あたしは啓ちゃんバカだ。
家中掃除すること2時間半。
啓太は今、お風呂の掃除をしている。
あたしは掃除を終え、ブラブラ部屋を回っていると、啓太の本棚らしきものを見つけた。
教科書や参考書、漫画も隣の棚に入っている。
啓太が熱血の野球漫画とか読むイメージじゃなかったから、ちょっと意外だった。
あたしは啓太の化学のノートを手に取り、中を見た。
「へぇ、綺麗にノートとってんのねぇ」
字がうまいとかじゃなくて、きちんと授業聞いてるなってのが分かるノートだ。
あたしとは大違い。
あたしは、途中で居眠りして暗号みたいになってるもん。
見習わなくちゃな…。

