ねぇ

サンタさんが本当にいるなら、クリスマスの奇跡ってものが本当にあるなら、あたしの気持ちを啓太に届けてよ。



…ううん。

いっその事、なかった事にしてほしい。

あたしが啓太を好きになった事を忘れさせてほしい。



本当に『演技』してた、あの頃に戻りたい。



どうしたらいい?今。


どんな顔して顔合わせればいいの?

嫌われたらどうしよう。


また、涙が溢れてきた。

視界が涙で滲んで、前が見えない。


ふらふら歩いていると、カップルにドンっと肩をぶつけた。


「いってぇな」

「……」

「…ねぇ、ちょっとこの子…」



“泣いてるよ”


彼女の方がぼそっと彼に呟いたのが聞こえた。





ほんと、可哀相な子。