何、それ………。
あたしは、顔から血が下がっていくのが分かった。
演技じゃないよ?
本気だよ?
本当に、啓ちゃんのこと、好きなのに。
何でよ。
何で。
笑わないでよ。
気づいてよ。
どうして…。
やっぱり、あたしの勝手な思い込みだったって事に、気づくのが怖くて、苦しくて。
忘れてたわけじゃないのに。
あたしは、啓太の…ニセモノのカノジョだって事。
でも、でも……気づいてほしかった。
ねぇ、どうして、どうして…
笑ってるの?
「…美園?」
啓太はあたしの様子に気づいて、表情を変え、顔を覗きこんだ。
あたしは俯き、肩を震わせた。
「……あたしは、啓ちゃんの…何?」
「え?」
何のために傍にいるの?
何のために?
同じ気持ちじゃないのに。
ニセモノなのに。
顔をあげ、涙のたまった目できっと啓ちゃんを睨んだ。
「だったら…何でよ……。何で、キスしたのよ…?」
そんな、きょとんとした顔しないでよ。
笑わないでよ。
気づいてよ…。
………気づいてよ…!
あたしは、荷物を全部持って、ブーツを乱暴に履き、部屋を飛び出した。
一度も後ろを振り返らなかった。
そうじゃない。
振り返れなかったんだ。