いつものようにお弁当を二つ。


いつもと同じ時間に家を出て、悠斗にいつ伝えようかと悩んでいた時だった。



「久しぶりに一緒になったな」


その声に振り返れば、そこには悠斗がいて。


当たり前のように指を絡めて手を繋いできた。



「おはよう、悠斗」


然り気無く手を離そうと逃げても再び繋がれた。


「……手、繋ぎたくない」


仕方なく本音を言えば、悠斗は笑っていた。


「なに拗ねてんだよ。あれか、あんまり構ってやれなかったからか?怒んなよ」


「……悠斗、放課後少し話がしたい」


「今日は無理。明日にしてくんねぇ?」


「……じゃあお昼休み始まってすぐ」


「昼も無理」


「なら、もういい。私のために時間は作らなくていいよ」


「なーに怒ってんの?分かったよ。昼も夜も彩音のために傍にいる。だからこっち向け、な?好きだよ」


「やめて。じゃあ放課後。時間は取らせないよ」



私は一度も顔を見なかった。何度払っても掴まえられる手は、今はもう離れないようにギュッと握られているから諦めるしかなかった。



終始無言の私に対して悠斗もまた無言で、でも歩幅は合わせてくれる優しさだけは健在だった。