「別に、不良なんかじゃないし」
「送ってくよ」
「いや、お気遣いなく……」
「遠慮すんなって」
「してないから、だいじょーぶ」
「もうキスしないよ?」
「き、キスなんてしてません。犬に舐められただけです!!なんの事ですか!?」
「あーはいはい」
この時の悠斗はニコニコと笑って、冗談を言いながら着いてきた。
冗談ばっかりだったけど、女の子が暗い夜道を一人で歩く事が心配だったのかもしれない。悠斗は何も言わなかったけど、一緒にいたら優しい人だってひしひしと伝わってきた。
「彩音はさー、俺の事知ってんの?」
「佐伯悠斗君。学年で一番人気の男子、だよね?噂もたくさん聞いてる」
「そっか。彩音は俺の事キライ?」
「なんで?」
「もうキスしねぇのにほら、避けてる。噂もたくさん聞いてるって事はチャラい俺はキライって事だろ?」
「うん、チャラい男はキライだな。不特定多数と付き合ってる悠斗君はあんまり好きじゃないし、いきなりキスして当たり前な顔をしてたのも……うん、最悪。でも……見返りなんて求めないで誰かに優しくしてる悠斗君を何度か目撃した事あるし、そーゆー部分は素敵だと思う。だから、キライな人って嫌悪はないかな?私に被害がなければ」
なんてね、会って2回目の悠斗に調子にノってペラペラ喋ったら、急に黙っちゃって……気まずくなった。
「あ、家はココだから。なんかわざわざありがと」
ずーっと黙ったままの悠斗に、ちょっとだけ悲しくなって、これが最後だななんてぼんやりと考えていたら、悠斗は笑った。
子供たちに向けていたような屈託のない笑顔で。
「彩音、俺の事好きになったの?」
「はあ!?」
「だって何度も見たんでしょ?無関心な男の行動ならいちいち覚えてないだろ?彩音は俺の事、好き?」
「自意識過剰!誰でもアンタを好きになるなんて思わないで!!」
自分がこんなにかわいくない生き物だったなんて、改めて気づいた。
