カウントダウン




「んだよ……キスくらいでビービー喚くな。俺と出来てラッキーだっただろ?」


「キスくらい!?ふざけんな!!ファーストキスだったのに……。ファーストキスは大好きな人と観覧車のてっぺんでするのが夢だったのにぃ〜ばかー」


ぽろぽろ溢すかわいい涙じゃなくて、鼻水と涙でぐちゃぐちゃの残念な涙。



「わ、悪かったよ。落ち着けって。な?ごめん……」


悠斗はふてぶてしい態度から一変して、オロオロしながらイイコイイコ。



「気安く触んないで!」


「分かったから、さっきの事はなかった事にしろ。犬に舐められたと思って。これ、やるから忘れろ」


差し出されたのは、イチゴのキャラメル。ポケットに入れていたのか少し溶けていた。


「ありがと」


「おう。ごめんな、彩音」


「……うん。じゃあ、さよなら」













おもいっきり意識した。
とんでもないシチュエーションだったけど、キス……した。


家に帰るまでぼーっとして、よくよく考えて憧れの人に鼻水でぐちゃぐちゃな顔を晒した事に死にそうになった。


でも、パワフルな女の子ならこれをチャンスに悠斗に近付くだろう。でも私は、もう会いたくなかった。


会いたいけど、会いたくない。複雑な乙女心。


それで、自分の心から逃げた。




もともと、自立するためにお金を貯めようと思っていた頃で、逃げた先はファミレスのバイト。




憧れだけで良かったから、この時は……。




なのに……。



「こんな時間にご帰宅?不良娘ちゃん」



バイト初日にして、帰る途中で悠斗に出会った。



そうだった、私の帰宅経路は悠斗のマンション前を通るのが一番の近道。




運命は、逃れられない。