「……どさくさ紛れにくれとか言うなよ。やめろよ……俺は、祐介には勝てねぇ。でも……祐介に彩音はやれねぇ。アイツだけは手離したくねぇんだ。


俺、約束する。もう泣かせない。誰よりも優しくして、アイツに貰った以上の愛情を注ぐから。


だから頼む



彩音を諦めてくれ」



今の俺はどーしようもないくらい弱気で、どーしようもないくらい馬鹿な男。


でも、祐介がライバルになって初めて知った。


彩音を失う怖さを……。



「……他の事なら譲れるかも知んねぇけど、悪い悠斗……約束は出来ない。俺も知ったから、彩音の良さ。


悠斗は泣いてすがる彩音が最高だって言ったけど、アイツな……手作りの弁当、ウマイって言って完食してやると


それこそ言葉で表現出来ねぇくらいスゲーかわいい顔で笑うんだよ。アレ、独り占めしたくなる。だから、諦める訳にはいかねぇの。


後は、彩音に任せるよ。それしか言えねー」


なぁ、祐介は知らねぇだろ。彩音の事話してる時の自分の顔。


今まで見たことねぇくらいのいいカオしてる。


その表情は、違うカタチで見たかった。



「……負けねぇよ、祐介には」


「言ってろよ。俺だって負けねーから」


負けねぇと言った祐介は、いつもの笑顔で、沈む俺の心を再び浮上させてくれる。


だから、勝てねぇ。



「なぁ悠斗、ずっと強がってたから聞かなかったけど、いつ彩音に惚れたワケ?」


「あー……分かんねぇ。気付いたら惚れてた。理窟じゃねーじゃん、そーゆーの。……あ!でも、初めてアイツと話した時さ、無理矢理キスしたんだよ」


「はぁ!?」


「そしたらマジギレして泣くし、しかも鼻水ダラダラでブッサイクな顔。なのにお菓子あげたら、すんげぇいい顔で笑うんだよ。好きんなったキッカケは、案外それかもな」


思えば、祐介に彩音の話をしたことあんまり無かった。


興味なさそうだったし、でも……祐介はどんな気持ちで今まで俺を見てきたんだろう。


彩音の事は譲れねぇけど、祐介を失うのも嫌だ。