茉莉さんのアイスを受け取ったのを見た二人は、何事もなかったように半分のアイスを引っ込めた。
その後また悠斗は私の肩を抱き直した。
左側では祐介が無言でそっと私の手を握ってくる。
ビクンと心臓が跳ねた。
だって、祐介にしては大胆な行動で、それは掟を守らないという意志の表れ。
正面にいる翔さんの眉間には濃いシワがよっていて、隣の茉莉さんはクスクスと笑っている。
私だけが変な緊張で胃がキリキリと痛みそう。
「祐介、昼休みの女……ヤッたの?」
不意に話かけるのは悠斗。忘れていた事を思い出させるように挑発的に口を開いていた。
「ガッコーの女なんてヤる訳ねーだろ?知ってるくせに聞くな」
ガリガリとアイスをかじる祐介は不機嫌で、私の手を握る力がギュッとなる。
「またまた〜、据え膳はいつも食ってたじゃん。ねぇ、翔さん。ここに来る女食ってるトコ見たことありますよね?」
悠斗は、私の心の変動を知ってるんだろうか。それとも、祐介とのケンカの原因に関係しているのか、祐介の評価を下げるような事を笑顔で話す。
「悠斗、お前茉莉ちゃんの前で下品な話すんなよ。祐介は大人の女しか相手にしねぇよな?それも体目当てで後腐れない一回だけの女」
「翔さん、彩音の前でも下品な話しないで欲しいンですけど。以前はそーだったけど、もう俺……好きな女だけにしようかと思ってます。だから、勝手に評価下げんなよ悠斗」
「なーにイイコぶってんだよ。ヤることはとりあえずヤッとくくせに。
てか、ヒトの女を自分のモンみたいに話すなよ。
彩音、お前嫌なんだろ?こーゆー好きでもない女をホイホイ抱く男」
私を挟んで飛び交う言葉の数々か、少し怖かった。
二人は笑顔すら浮かべているけど、どこかピリピリしている空気が伝わるし、翔さんもそわそわしてる。
「……そうだね。彼女がいるのにへーきで他の女の子と仲良くなる男を知ってるから、嫌悪感は半端ないけど?」
チラリと悠斗を見れば、苦笑いを堪えていた。