「どう?坂井。いまの気分は?」

「あんまり、からかうなよ。
彼女、困ってるぞ」


「お二人は、電車の中のお知り合い?」

「お知り合いだなんて、そんな、とんでもないです」

私は自分でも何を言いたいのかよく分からない言い訳をした。

「ハハハ。僕と彼女は乗る電車が同じという間柄さ」

「で、そこで坂井のことが気になりだした」

「私のこと、分かってましたか?」

「あれだけジロジロ見られたら、誰でも気づくよ」


やっぱりバレテたんだ。

そりゃそうだよね。気づかないほうがどうかしてる。