「里美は純粋すぎるんだよ。
いまどき童貞守ってる男なんていないよ」

お洒落な洋菓子店のテラスに
『童貞』なんて言葉が響いたもんだから私は慌てて声を殺すように小声で

「声が大きい」と言った。

直子は首をすぼめると小さく舌を出して辺りを見渡した。

「でも本当だよ、里美。もし仮に一人のためだけに守り抜いている男がいるとしたら・・・」

「いるとしたら?」

「・・・化石だね」

「化石?」

「そっ。生きた化石。天然記念物モノ」