少し余裕が出た私は、彼が昨日もたれかかっていた扉の横へ移った。

そして、そっと壁に寄りかかった。



彼の居た場所。


私はそこから見える車内の様子を眺めた。


中吊広告。

テレビ画面。

壁のポスター

窓の外を流れる風景。


彼も同じものを見ていたんだ。



暫くすると、車内に次の駅を知られるアナウンスが流れた。

とたんに胸の鼓動が早くなった。

緊張感が一気に増して、手のひらに汗がにじんだ。


彼が乗ってくる。

私は慌ててドアの左側の壁に移動した。