120秒の恋

私を乗せたタクシーは、一路、希望の丘に向かった。


「お客さん、」

峠の道を走りながら運転手のおじさんが私に声をかけた。

どことなく不安そうな声だ。

「はい」

「こんなこと聞くのも変なんだけど、お客さん、自殺しないよね」

「へぇ?」

「いやほら、見たところ手ぶらだし、旅行って感じでもなさそうだ。
・・・なんか思いつめてるみたいだから」

おじさんが心配するのも無理はない。

Tシャツにジーパン姿の女が、ひとりでこんな山奥までくれば自殺を心配するのも当然だ。


「心配しなくても大丈夫ですよ。
人が待ってるはずなんです。
本当は一緒に行く予定だったんですけど、いろいろあって」

「それならいいけど。帰りの車は見つからんよ。
こんな山奥だし、一応、確認するまで待っとるよ」

「ありがとうございます」