昼食の後、私たち3人はライブショーを見るために長い列に並んでいた。

そのとき、一人の男性が私のほうに近づいてきた。

「橘さん?」

男性の問いかけに私は一瞬、戸惑った。

でもすぐに彼が誰だか思い出した。

「ああ、三上さん?」

「おう、やっぱり君かぁ」

マーケティング事業部で坂井さんの同僚だった三上さんだった。
Tシャツ姿に野球帽を被っていたので、すぐには分からなかった。

「え~、別人みたい」

「ハッハッハッ。スーツ姿しか見たことないもんな」

豪快な笑い方はあの時のままだ。

「いや~、でもこんなとこで会うなんてビックリだなぁ」

「私もですよ。世間は狭いって言うけど、本当ですね」

「今日は友達と?」

三上さんは私の横にいた二人を見ながらそう聞いた。

「はい。二人、結婚するんでそのお祝いです。
・・・三上さんは?」

「俺は家庭サービス」

振り向いたその先の木陰に奥さんと二人の男の子が立っていた。