ひとりで居ることに慣れているつもりだった。

いや、彼を知るまで、ひとりが淋しいなんて思ったことは一度も無い。


いま、彼を失って、ひとりで居ることが淋しくてたまらない。


彼と同じ香水の匂いをかぐたびに幸せになれた。

彼と同じようなうしろ姿を見るたびに胸がおどった。


やっぱり、彼じゃなきゃ駄目なんだ。

ほかの人じゃ駄目なんだ。


彼と離れて、そのことがハッキリと分かった。


わたしの胸にポッカリと開いた大きな穴は決して埋まることが無いまま、季節は夏を迎えようとしていた。