早く仕事に慣れるために私は遅くまで残業した。

仕事に没頭することで、坂井さんのことを忘れたかった。

でも、忘れようとすればするほど、彼に対する思いは逆に強くなっていく。


そんな簡単に彼を忘れることなんて出来なかった。



直子が、失恋の傷を癒すのは新しい恋だと言った。


会社には男性社員が大勢いる。

広告という仕事柄、みんなお洒落だ。

服のセンスもいいし、話も上手い。


でも私の心は、まったくときめかない。

坂井さんを見たときの、あのドキドキする思いがほかの人には、みじんも感じないのだ。