クルミさんが個人的に送別会をすると言ってくれたけど、気持ちだけもらっておくことにした。

彼女と飲めば、坂井さんの話がでないわけはない。

いまの私にとっては拷問だよ。


結局、弥生さんや三上さんたちに別れの挨拶もしないまま、わたしは工場を辞めた。


もちろん坂井さんにも会っていない。


あの夜、公園でさよならをしたのを最後に、一切の接触はない。


でも、それは彼らしいことだと思った。

わたしが逆の立場でも同じようにしたと思う。


わたしと彼は性格が似ているところがある。

一度決めたことは簡単には変えない。

未練がましいことは嫌い。

常に相手の気持ちを考える。


だからもう会わない。

それだけのことだ。


そのほうが中途半端に気持ちを引きずることなく次に進める。