自分のことはどうでもいい。

いまは彼のことだけが心配だった。


全身から力が抜けていた。

手すりにつかまりながら、やっとの思いで階段を下りていく。

すると、すぐ脇にあった休憩室から話し声がもれてきた。



「それにしても、後藤さんも上手いことやりましたね」


後藤?


「チャンスは最大限利用しなきゃな。
これで首尾よく麗子さんが坂井と結婚できれば彼女に協力した甲斐があるってもんだ」

「常務を味方に付ければ怖いものなしですよね」

「これで俺の出世は確定だな」