建物は日本家屋の立派なものだ。

重厚な作りの広い玄関で靴を脱ぐと庭に面した長い廊下を通って奥の離れへと案内された。

庭がすごく広いよ。

池もあるし、遠くで竹筒を叩くような音が響いてる。

都会の真ん中に、こんな静かな場所があるなんて。


離れの部屋に入ると女性がひとり座敷に座っていた。

彼女は私を見ると

「こんばんは」と言って微笑んだ。

不適な笑みを浮かべているように思えた。


「麗子さま、お食事のほうをお持ちしてもよろしいでしょうか」

「ええ、お願いするわ」


女将が部屋を後にする。