「でも、わたしじゃ不釣合いだよ」

「ふむ。
僕は、君を一人の人間として見てきたつもりだよ。肩書きなんて関係ない」

「でも・・・」

「じゃ、君は僕の肩書きが気に入って、僕と付き合いたいと思ったのかい?」

私は何度も首を横に振った。

「違うよ」


「会社で噂になってるみたいなんですよ。里美が坂井さんのことを誘惑したって。
あたしと違って里美はすごく真面目な性格だから、かなり凹んじゃって」

「例の噂か」

「里美にしてみれば、坂井さんを追いかけて会社にもぐりこんだことが事実だったから、余計に応えてるんですよ」

「反論の余地がないってことかぁ」

「まぁ、そうなんですよ」

「今の状態じゃ、何を言っても無理かもしれないなぁ」

「え~、里美を見捨てないでくださいよぉ」

「見捨ててなんかないよ。
急ぐことはないさ。じっくり行こう」

彼はそう言うと、シークヮーサーのチュウハイを一気に飲み干した。