「それってお見合いだよ」

「見合いかぁ。
・・・だとしても、僕たちには関係ないさ」

「え?」

「そうだろ?
僕は君と付き合ってるんだよ。
もし仮に正式な見合いの話がきたとしても、断るよ」

彼のその言葉に私は正直ほっとした。

「でも、偉い人の娘さんなんでしょ?」

「確かに、神山常務には可愛がってもらっているけど、それとこれとは話が別だよ。
結婚って、好きな人と一緒になるからこそ意味があるんだろ?
好きでもないのに結婚なんか出来ないよ」

「そうだけど・・・」

「僕が愛してるのは里美だけだよ」


初めて彼に里美って呼ばれた。


初めて愛してるって言われた。


すごく嬉しくて跳び上がりたかったけど、微かな不安がそれを邪魔していた。