深い森の茂みの中から
木の枝に止まっている美しい野鳥を観察するかのように私はおじさん達の隙間から、じっと彼を見つめた。


彼は中吊り広告を眺めていた。


短めの髪に縁なしの眼鏡。

グレーのスーツに白い水玉模様の黄色のネクタイ。

モデルのような美形ではないけれど
私のタイプだ。

文句なしだね。


電車が次の駅に到着すると大勢の客とともに彼が外へ出る。


あれ?


降りちゃうの?

階段を上る彼の姿がチラリと見えた。


静かに走り出す電車。


残された私は眼を閉じて彼の顔を何度も思い出した。