120秒の恋

季節は春を迎えた。

暖かい陽気が続いたせいで、桜の花が一気に開花していた。


工場の敷地内にも桜の木があり、どれも満開だった。


週末、私は坂井さんと花見に出かけた。

電車で30分ほどのところに桜で有名な庭園がある。
そこの、樹齢300年という桜の名木を見たかったのだ。



途中の駅で電車を乗り換える。


路線が上下十文字に交差するこの駅は乗り換えがとても不便な駅だった。

エレベーターやエスカレーターが無く、長い階段を上り下りしなければならなかったからだ。


二人で不満を言いながら歩いていくと、階段の手前で乳母車とともに途方に暮れる女性がいた。

どうやら、階段しかないことを知らなかったみたいだ。

通り過ぎる人々は乳母車を迷惑そうに避けながら歩いていく。
中には女性のことを睨みつけていく人もいた。