それから暫く、仕事の話で盛り上がった。


私は、もっぱら3人の話の聞き役だ。

入ったばかりで知らないことが多かったからだけど、時々、坂井さんが優しく説明をしてくれた。


説明を受けながら、私は不思議な気分だった。


今朝、電車の中で彼に会ったときは名前も知らない赤の他人だったのに、その日の夜には同じテーブルで話をしている。


そのことが不思議だった。



1時間ほど話をしたところで、クルミさんが三上さんを誘いカウンター席に移った。

私と坂井さんを二人だけにするためだ。



彼が、私だけを見ている。

とろけてしまいそうな私。

時間がゆっくり流れている気がした。