「わかってんよっ!わかってんだけど……俺のせいでありすが死ぬのは耐えられねぇ」
くしゃり、と顔が歪む。
多分ぐちゃぐちゃの顔で泣いているんだって思う。
「……お前、そんなに横山ありすが好きか?」
「好きだ。ありすが生きているならそれだけでいい」
「……そうか。じゃあ……気まぐれな提案をしよう」
俺を迎えに来た死神は随分と……変わり種だったようだ。
六文銭は冥府への渡り賃── それがなければ冥府に渡ることも出来ない。
それを銅の硬貨に換えた。
六十円分の硬貨を渡し「これをどう使うかはお前の自由だ」と渡した。
冥府へ渡るか、それとも── 。
特別な硬貨を介せば生きている人間の世界に交われるのだと言う。
今時無いような公衆電話で一番近い市立病院に電話を掛けた。
直ぐに来て欲しい、そう告げている間に三十円が消えた。
残り三十円── もう死後の世界とやらへは行けない。片道分の料金の半分を使ってしまったのだ。流石に値切るのも出来ないだろう。
でも── 。
「あと三十円……か……」
電話が掛けられるのは限られている。
時間にして三分── 掛けられたらラッキーだ。
「なぁ、ありす。俺、ありすが好きだった」
ありすの携帯電話に留守電を吹き込んだ。
伝えたかったたった一言。
それだけ伝えられればいいや、って思った一言だ。
ありすがそれを聞くのは多分退院して元気になってからだ。留守電の登録時間を聞いてありすは驚くかもしれない。
でもそれで笑ったら……ラッキーかな?なんて思いながら啓一は運ばれていくありすを見つめた。
くしゃり、と顔が歪む。
多分ぐちゃぐちゃの顔で泣いているんだって思う。
「……お前、そんなに横山ありすが好きか?」
「好きだ。ありすが生きているならそれだけでいい」
「……そうか。じゃあ……気まぐれな提案をしよう」
俺を迎えに来た死神は随分と……変わり種だったようだ。
六文銭は冥府への渡り賃── それがなければ冥府に渡ることも出来ない。
それを銅の硬貨に換えた。
六十円分の硬貨を渡し「これをどう使うかはお前の自由だ」と渡した。
冥府へ渡るか、それとも── 。
特別な硬貨を介せば生きている人間の世界に交われるのだと言う。
今時無いような公衆電話で一番近い市立病院に電話を掛けた。
直ぐに来て欲しい、そう告げている間に三十円が消えた。
残り三十円── もう死後の世界とやらへは行けない。片道分の料金の半分を使ってしまったのだ。流石に値切るのも出来ないだろう。
でも── 。
「あと三十円……か……」
電話が掛けられるのは限られている。
時間にして三分── 掛けられたらラッキーだ。
「なぁ、ありす。俺、ありすが好きだった」
ありすの携帯電話に留守電を吹き込んだ。
伝えたかったたった一言。
それだけ伝えられればいいや、って思った一言だ。
ありすがそれを聞くのは多分退院して元気になってからだ。留守電の登録時間を聞いてありすは驚くかもしれない。
でもそれで笑ったら……ラッキーかな?なんて思いながら啓一は運ばれていくありすを見つめた。

