ありすの腕を男が掴んだ。
どっかで見たことがある── って思った。記憶が曖昧なのは臨時の教育実習生で、ホントに短い間しか学校にいなかったからだ。
(そういや……クラスの奴らが……)
教育実習生のめつきがおかしい、なんて噂になっていた。
女生徒にべたべた触るとか、そんな話、聞いていた。
でも── 。
(ありすにつきまとっていたなんて── 知らない)
驚いた── その瞬間振り上げられた刃に吐き気が止まらない。
どうしよう……こいつのせいでありすが── と思った瞬間、前に出た俺の胸をすり抜け、ありすの胸にナイフが突き刺さっていた。
「── アンタが悪いんだ」
それだけ言い残して走り去っていく男の前でありすが崩れ落ちた。
声もなく、ただ呆然と胸の辺りの染みが広がっていく。赤い── 赤黒い染みが流れていくありすの命に見える。
「……啓ちゃん、痛いよ……」
ぽろり……と涙が零れていく。
血溜まりの中で崩れていくありすを抱きしめることも出来ない。
「ありす、ありす、ありす、ありすっ!」
死ぬなと何度も呼びかけてもありすには聞こえて居ない。
痛みに顔を歪めて何度も何度も啓一の名を呼んだ。
「……なんで?なんで俺……なんもできねぇんだよ」
死ぬありすを止めることは出来ないのか── そう思った瞬間、啓一の横にありすが居た。いや……ありすの顔をした死神が、居た。
「啓一?」
「……死神、か?」
「ああ、そうだ。お前は何故ここに居る?」
命を刈りに来た死神に命乞いをする意味は無いのかもしれない。
でも── 。
「頼むっ!ありすを助けてくれっ!」
「ん?」
「俺はどうなってもいいから……ありすを助けさせてくれ。四十九日も要らない。頼む、せめて救急車呼んで、ありすが助かるようにしてくれよっ!俺に出来ることなんでもする。何でもするからっ!」
土下座だろうとなんだろうと出来る。
ありすが生きて、生きて笑ってくれるならなんでもいい。
「啓一……お前には言ったはずだ。横山ありすは死ぬ、と」
どっかで見たことがある── って思った。記憶が曖昧なのは臨時の教育実習生で、ホントに短い間しか学校にいなかったからだ。
(そういや……クラスの奴らが……)
教育実習生のめつきがおかしい、なんて噂になっていた。
女生徒にべたべた触るとか、そんな話、聞いていた。
でも── 。
(ありすにつきまとっていたなんて── 知らない)
驚いた── その瞬間振り上げられた刃に吐き気が止まらない。
どうしよう……こいつのせいでありすが── と思った瞬間、前に出た俺の胸をすり抜け、ありすの胸にナイフが突き刺さっていた。
「── アンタが悪いんだ」
それだけ言い残して走り去っていく男の前でありすが崩れ落ちた。
声もなく、ただ呆然と胸の辺りの染みが広がっていく。赤い── 赤黒い染みが流れていくありすの命に見える。
「……啓ちゃん、痛いよ……」
ぽろり……と涙が零れていく。
血溜まりの中で崩れていくありすを抱きしめることも出来ない。
「ありす、ありす、ありす、ありすっ!」
死ぬなと何度も呼びかけてもありすには聞こえて居ない。
痛みに顔を歪めて何度も何度も啓一の名を呼んだ。
「……なんで?なんで俺……なんもできねぇんだよ」
死ぬありすを止めることは出来ないのか── そう思った瞬間、啓一の横にありすが居た。いや……ありすの顔をした死神が、居た。
「啓一?」
「……死神、か?」
「ああ、そうだ。お前は何故ここに居る?」
命を刈りに来た死神に命乞いをする意味は無いのかもしれない。
でも── 。
「頼むっ!ありすを助けてくれっ!」
「ん?」
「俺はどうなってもいいから……ありすを助けさせてくれ。四十九日も要らない。頼む、せめて救急車呼んで、ありすが助かるようにしてくれよっ!俺に出来ることなんでもする。何でもするからっ!」
土下座だろうとなんだろうと出来る。
ありすが生きて、生きて笑ってくれるならなんでもいい。
「啓一……お前には言ったはずだ。横山ありすは死ぬ、と」

